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熱電おもしろ話
第一話「ゼーベックとペルチェは、どちらが有名?」
 1821年、ゼーベック(Thomas Johann Seebeck,ドイツ)は銅とビスマスまたはビスマスとアンチモンを接合して電気回路を作り、この回路を含む平面を図1のように子午面(北極と南極を通るように地球を縦割りにした面)内に置いて接合部の一方を加熱してみた。
この実験でゼーベックは回路の中に置いた磁針が南北の方向から外れる特異な現象を発見した。このとき子午面にある磁針は地磁気の方向に地磁気の力によって位置決めされているので、加熱によって地磁気とは方向の違う、別の力が働いたことになる。
図1
 すなわち、加熱によって他の接合部との間に温度差ができ、回路に電流が流れ、その結果生じた磁界のため、ビオ・サバール(Biot/Savar, 二人ともフランス人)の法則に従って磁針が南北の方向から外れたわけだ。
 この法則は前年に発見されていたが、ゼーベックは「地磁気のような分極現象は温度差(地球の場合は赤道と両局地の温度差)によって生ずる」という持論があったので、この実験結果の解釈も(事実とは異なるが)斬新な?ものだった。つまり、加熱による温度差で回路を構成している金属に磁気分極が生じ、磁針が振れたと言うものである。彼はこの持論を実証するためいろいろな物質について実験を行い、磁針の振れ方向と、その効果の大きい順に系列を作った。
 1834年、ペルチエ(Jean Charles A. Peltier, フランス)は、ゼーベックが用いたのと同様な、二つの異種金属をつないだ回路に直流を流すと、一方の接合部で吸熱が、他方の接合部では発熱が起り、電流の向きを変えるとこの関係が反転することを発見した。彼は発熱しか起らないと固く信じていたが、予期せぬ結果が得られたので、このことをドイツの学会誌に報告した。残念ながら彼の行った実験方法の図が欠落しているが、説明文から図2のような装置ではないかと想像される。温度を測定せずに、気体の体積変化によって、発熱と吸熱がかなり敏感に検知できそうな、巧妙な仕掛けだ。
図2
 ゼーベックもペルチエも熱電変換現象を正しく説明することはできなかったが、ゼーベックの方が多くの物質について精力的に実験を行い、金属の熱起電力に関する系統的なデータを残したといえる。そのせいか、電気の歴史年表にはどちらかと言えばゼーベックの方がペルチエよりも、しばしば登場するようだ。もっとも、ほぼ同時代のエルステッド(H.C.Oersted,1820年電流の磁気作用,デンマーク)、アンペア(A.M.Ampere,1820年電流の磁気相互作用,フランス)、オーム(G.S.Ohm,1826年オームの法則,ドイツ)、ファラデー(M.Faraday,1831電磁誘導,イギリス)などの著名な人たちと比較すると、電磁気現象発見の歴史の中での熱電変換の特殊性(電磁気学と熱力学との境界領域)から、ゼーベックもペルチエも少し異質と見られているのかな?
(注:内容の多くの部分を上村欣一・西田勲夫の「熱電半導体とその応用,日刊工業1988」から引用しました。)

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