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続・熱電おもしろ話
第8話 「25年前に宇宙実験室で人工雪作り」

2008年3月11日に打ち上げられたスペースシャトル「エンデバー号」では、初めての日本発有人実験棟「きぼう」の第1便「船内保管庫」が運ばれ、土井宇宙飛行士により無事に国際宇宙ステーションに取り付けられました。あと2回にわけて構成モジュールを送って実験棟は出来上がる見込みです。この実験棟では地上とは大きく異なる宇宙環境で、特に無重力下(厳密には微小重力下)でどのような現象が起こるか、どのような新物質が出来るか等が調べられる予定です。ところが25年前に小規模ですが無重力の宇宙で雪の結晶がどのように成長するか、熱電モジュールを使った実験がすでに実施されていました。今回はこの実験についてお話します。

1983年9月1日にスペースシャトル「チャレンジャー号」(写真1)で、宇宙で初めて人工雪をつくる実験が行われて見事成功、世間を驚かせました。写真2はスペースシャトル内の小規模実験容器をしようする権利を朝日新聞社が獲得して、「無重力状態の宇宙空間でどのような実験をしたら面白いか」というアイデアコンテストを実施した結果ある高校生のアイデアが採用されたもの。この実験で、結晶生成槽の冷却には熱電モジュールが使われました。

写真1 チャレンジャー号の打ち上げ
写真1 チャレンジャー号の打ち上げ
写真2 朝日新聞 昭和58年9月15付朝刊1面
写真2 朝日新聞 昭和58年9月15付朝刊1面

宇宙人工雪実験装置の概観は写真3に示すようなもので、NECにて製作されました。この装置の中には、結晶生成槽と結晶成長のVTRが納められています。結晶生成槽は、図1(1)に示すように縦、横4cm、高さ10 cmの銅製の冷却箱からなり、2個の熱電モジュールにより-15℃まで冷やされます。1気圧の窒素の中で水蒸気を供給し雪結晶の種となるヨウ化銀の微粒子をまき、人工雪の結晶を成長させ、その様子をビデオで撮影しようとするものです。

写真3 宇宙人工雪実験装置
写真3 宇宙人工雪実験装置
図1 結晶生成槽構造
図1 結晶生成槽構造

ビデオで観察された結果(2)、最大で直径約3mmの六方晶系の球形に見える結晶が観察されました。これは微小重力下では、宙に浮いている小さな水滴が合体してかなり大きくなっても地上に落ちてこないので、大きな球状の水滴のまま氷結したためと考えられています。

しかし、無重力または微小重力下での人工雪の結晶生成について解明されたとは到底言えません。例えば、-15℃以外の冷却温度での実験なども必要です。いつの日か「きぼう」で、再度人工雪の実験が行われることを希望してやみません。

(1)上村欣一、西田勲夫著 「熱電半導体とその応用」 日刊工業新聞社
(2)井口洋夫監修「わが国の宇宙実験」p178 宇宙航空開発機構

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