第七話「まだまだある熱電おもしろグッズ」| 続・熱電おもしろ話

今回はいままでの話で洩れた商品の紹介をひとまとめで紹介します。 まず最初は、「冷水花瓶」。花瓶に入れた花を長持ちさせるために冷たい水は効果があるのではと、他の方法も含めて花の寿命への効果を評価しました。テストした標準は1.水温、2.活性炭(成熟作用のあるエチレンガス吸着効果を狙った)、3.銅の網(殺菌効果を狙った)、4.塩素系漂白剤(殺菌効果を狙った)、5.中性洗剤(殺菌効果を狙った)でした。試験の結果、4と5の効果が水温の効果を上回りこのプロジェクトは中止になりました。

次は「ワンちゃんクーラー」。犬好きの事業家から犬が夏になると暑さでぐったりしてしまうので、犬用の冷たいプレートを作れないかと要望があり、作ったのが「ワンちゃんクーラー」です。アルミのプレートの裏側に熱電モジュールを貼り付け、比較的簡単にできあがりましたが思いがけない問題が発生しました。犬が電源供給用のコードをかじってしまうのです。感電したら大変と商品化をあきらめました。躾のいい犬は大丈夫でしょうが、我が家のラブラドールは机の脚などなんでも手当たりしだいに齧ってしまうので、この「ワンちゃんプレート」の使用はできません。

眠さとたたかう受験生向けに「電子冷却ハチマキ」の開発もしました。これは(写真1)のように額の部分に熱電モジュールを埋め込んだものです。額が冷えすぎて痛くなる問題がありました。頭寒足熱の頭寒とは、どうも頭全体を冷やす必要があるのではないかと思っています。氷嚢や冷凍ジェルを使ったものでも、頭が痛くなります。これは一部が冷やされているためではないかと想像しています。

  • 自動車用熱電素子エアコンの構成品

    写真1-1 電子冷却ハチマキ

  • クライスラーのトランクに設置されたエアコンの主要部

    写真1-2 電子冷却ハチマキ

夏の寝苦しい夜のための、電子安眠枕も作りました。頭があたっている部分は確かに冷えますが反対側で如何に睡眠を妨げることなく放熱するか、その処理に一工夫が必要だったようです。冷凍ジェルをタオルでくるんで頭の下に敷く簡易な方法を凌駕できませんでした。

体温を調節できない難病の人のために、ペルチェ素子を組み込んで温度調節が可能な外套を1970年に開発しましたが、最近「NPO法人WIN(ウェアラブル環境情報ネット推進機構)」が開発したベスト状のウェアラブル冷房服(写真2)で、このコンセプトが復活しました。NPO法人WINではさらにケープ状のウェアラブル冷房服を開発して一般の人に体験試着してもらい、ポジティブな意見とともに改良点など今後の開発に貴重な意見も聞けたようです。いままで述べた開発品の中ではウェアラブル冷房服は最も実用化の可能性が高いのではないでしょうか。今後の進歩が期待されます。

  • 自動車用熱電素子エアコンの構成品

    写真2-1 WINが開発したウェアラブル冷房服

  • クライスラーのトランクに設置されたエアコンの主要部

    写真2-2 ウェアラブル冷房服に取り付けられたペルチェモジュール

写真2について
出典:日経BP社「ITpro」
写真提供:WIN(ウェアラブル環境情報ネット推進機構)